SSブログ

無賃送還に係わる規則と現場の運用の乖離 [交通]

先日の台風の影響で、各所で運休や減便が発生しました。

総武線は、幕張~千葉間(快速は津田沼~佐倉間)において運転を見合わせ、当初の予定では18時再開でした。

まあ18時なら幕張まで行ってそこで待っていてもいいかなと思い、とりあえず幕張まで行ったわけですが(駅メモもやりたかったしね)、いざ幕張に着くと、知らぬ間に運転再開見込みが19時に延びている。
その時はまだ運転をするものだと思い、結局1時間ほど待ってはみたものの、流石に日も暮れ、どうも運転再開する気配を感じられず、嫌な予感がしつつも窓口へ再開するのか確認しに行きました。


・「無賃送還は発駅までしかできません」

駅員にいつ再開するのかと言ったところ、帰ってきた答えは「今日中の再開は厳しいです」。じゃあそこで19時再開って書いてあるのは何なんだと言っても、なんだかふんわりとした、的を射ない回答しか来ない。いや、あんたらがずっと19時再開って言ってたんでしょ…

結局、仕方が無いので千葉まで行けないのならば、船橋までの送還を受けようと、とりあえずSuicaを出して、「これで引き返すってなったら一旦精算が必要ですか?」と念を押す意味で確認をしました。


JR東日本旅客営業規則第282条(いわゆる皆さんご存知運送約款の一部。以降は営業規則を便宜上約款と記載します)においては、無賃送還に関する取り決めがずらりと記載されています(正確にはこの後にも何条か続く)。基本的には無賃送還に関する取扱いに関しては、この282条と以下に付随する規則が準用されます。
…のですが、Suicaを使用していた場合は話が変わります。Suicaはじめ、IC乗車券にはIC乗車券取扱規則(以下、便宜上規則と表記)という、旅客営業規則とはまた別の規則が存在しており、IC乗車券についてはこちらの規則を優先して準用することになっています。列車の運行不能に対する無賃送還の取り扱いは第56条、PDFのページでは16頁に記載されています。

これ以降は以上の規則も併せてご覧いただきながら読んでいただければと思います(たぶん約款とか規則とか読まないと話がよくわからなくなるので)。


「発駅まで戻るのであれば運賃は収受しません」
当然の回答です。逆にここで運賃を収受するとか言われたらとりあえずその場で規則を見せてました。
問題はここから。私は発駅まで戻るのであれば、途中まで引き返す選択肢を取ろうと思い、「途中駅まで引き返したい」旨を申し出ました。これについては規則にも定められている正当な請求です(途中駅までの送還)。が、幕張駅の駅員はその場で「いや、発駅までしか送還はできません」…と言い放ちました。

流石に規則上問題のないはずの取り扱いを要求しているのにも関わらず、それを拒否される謂れは無いので、とりあえず約款ないしは規則上何が問題なのかを問いただそうと思ったら、後ろから別の駅員が対応中だった駅員を呼び出しに来た。と同時にその駅員、あろうことか無言でこちらの了承も得ずに勝手に入場記録を取り消し、カードを返却してきた。しかも何も言わずそのままそこから去ろうとしたので流石にカチンときてとりあえず呼び止め、どういうことだと言ったら手で改札外を指しながら「どうぞ」。私は一言も降りるとは言っていないんですけど。

結局「途中駅までの送還ができないのであれば発駅送還でいいです」と言ったところ、こんどは不機嫌そうにしながら何故か幕張駅の乗車駅証明書をカードと一緒に渡してきた。いやだからどうしろって言うんだ。

makuhari_station_certificate.png
幕張駅の乗車駅証明書(日付印入ってました(見落としてた))

  ☆  ☆  ☆

とはいえ、なんだか面倒になったのでとりあえず折返しの総武線に乗車、船橋で下車。

船橋駅の有人改札で、Suicaと乗車駅証明書を提示して、「幕張駅で入場記録を消去されてしまい送還を受けられなくなった」旨を申告。そのうえで乗車駅(定期券区間内)を申告し、結果として東京―船橋の運賃388円の精算になりました。

その時の船橋駅の駅員さんの「誤乗扱いで処理します」の一言が妙に引っ掛かりますが(誤乗と運行不能とでは同じ無賃送還でも適用される条文が異なる)、とりあえず支払うべき運賃に差異は無いのでそこでおしまい。


あ、帰りは京成を使いましたw

  ☆  ☆  ☆

さて、ICカード取扱規則に記載されている
『(2) 旅行を中止したとき又は発駅に至る途中駅まで送還したとき
旅行中止駅において発駅から当該駅までの区間について第 38 条及び第 39 条の規定により
算出した IC 運賃を収受します。』
この条文は、途中駅において旅行を中止する、ないしはそこまで乗車してきた区間の途中駅まで送還を受けることはできるけど、発駅からそこまでの運賃が必要だよ、という内容の条文です。
逆に言えば、発駅から下車駅までの運賃を精算すれば、途中駅までの送還を受けることも(この条文を読む限りでは)事実上可能なわけです。
ただ、これは乗客が「請求できる」とされている内容ではあるものの、JRのことですから、現場の判断で運送約款を無視した取扱いがなされることもまああり得なくはないです(ていうかJR西で過去に前例があるし)。それに、請求はできるけど、JRがその請求に対し履行をしなければいけないとも書かれていないので、逆に言えばJRは無賃送還を拒否することも可能なわけです。現実問題、そんなことしたら大問題なのでしないってだけでしょうけど。(ただし、補足ですが旅客が無賃送還に係わる条項を承諾しない場合はJRは無賃送還を拒否し、運賃全額を徴収することは可能です)

当初運転再開をするというアナウンスだったものが、いざ不通区間の入口まで行ったら運転再開しないと言われ、どうにもならなくなったものをこちらの責任にされても、私からすれば「なら何故最初から今日中の運転再開はできないってアナウンスをしなかったんだ」ってなるのは当然ですし、そこで折り返すなら運賃を払えと言われたら無賃送還を選択するのは当然です。振替受けられないじゃん。
結果として、この場合は運行不能による送還の取り扱いになるはずなのですが、幕張まで乗車し、そこから千葉方面への運転再開を待ったものの、結果として再開はしない旨を告げられてしまったがために引き返す選択肢しかなくなった、この場合は果たして誤乗としての取り扱いでいいのだろうか、という疑問が残ったままになってしまいます。まあ深く考えても仕方ないことなのでしょうけど…

「無賃送還中は途中下車はできない」という規定もありますが、それに付随して「送還途中で下車した場合は発駅から当該駅までの運賃を収受する」ことになっています。途中駅送還が不可なのであれば、このような条文は不要ですし、余計なトラブルの元になりかねないので削除するべきなのですが、一体何故こんな条文があるのか非常に理解に苦しむも、まあ答えは出ませんので…


  ☆  ☆  ☆

入場記録を勝手に取り消された挙句、何の説明もなしに乗車駅証明書を渡され、電車に乗ることになったわけですが。

これ、船橋で下車するときに私が何も申告しなければ、幕張―船橋の運賃を引き去ることになります。ただこの場合、実乗車区間と実際に支払う運賃が合わなくなるので、まあいわゆる不正乗車になるわけですが。
不正乗車の場合、JRは旅客に対し、実乗車区間の運賃とその2倍の増運賃を請求することができます。が、この場合、そもそもJRの職員である幕張駅の駅員が、旅客の申し出を受ける前に自己判断で入場記録を取り消し、その上何の説明もなしにただ乗車駅証明書を渡したのみで、下車駅においてどう説明しろとも、下車駅に連絡するでもなく、どうとでもできる状態にしているので、結果として仮に船橋駅での精算が実乗車区間の運賃に満たなくても、これは落ち度がJR側にあるので、不正乗車に係わる運賃を請求される謂れはありませんし、実際何も知らない人ならば普通に幕張ー船橋で精算するでしょう。結局幕張駅の駅員は何も言っていないわけですから説明のしようがありませんしね。

あの時幕張駅の駅員が何を考えていたのか、仮に不正乗車となった場合どう責任を取るつもりだったのか(まあどうせ「言ってない」でのらりくらりかわすのがJR束の常套手段なのでそうするでしょうが)、不思議ですがまあ過ぎたことなのでいいとします。


ただ、少なくともJR東日本においては、JRが提示する運送約款は必ずしも規則として準用される・できるとは限らない、ということではありました。
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。